自由きままな生活で
FF11_Story_11(A×W)
「ヴェルナー?」
その声に振り上げた視線の先には、久方ぶりに見る幼馴染の姿。
「……エ、ルカ?」
「なんでそんなところに座り込んでるの……っていうか何その顔」
驚いた顔をして近づいてくるエルカに、ヴェルナーも視線をはずせない。
本来、故郷のサンドリアにいるはずのエルカが、何故このジュノの街に、今自分の目の前にいるのだろうか。
疑問は思えど、その口が開けない。
歩み寄って、同じ視線の高さに腰を落としたエルカは、心配そうな顔でヴェルナーの様子を窺う。
「連絡さっぱりこなくなったと思ったら、またこんな……もう少し加減を覚えなよ」
心配げな言葉を述べつつも、呆れた感じのため息を軽くつきつつ、ヴェルナーの頬を優しくなでる。
その暖かい手は、懐かしくも久しぶりに触れる優しさだった。
「とりあえず、部屋に戻ろう。ね?」
問い掛けの言葉を言いつつも、エルカはヴェルナーの腕を持ち上げ、そのまま引き上げる。
ヴェルナーは無言で、連れられるがままにエルカの後をついていった。
FF11_Story_10(A×W)
あの日以来、ヴェルナーは1週間もの間レンタルハウスに引きこもっていた。
何をするでもなくゴロゴロと、ただ悶々と悩みながら。
そうして過ごした8日目、ヴェルナーは適当に身支度を整えて外へ出た。
(ずっと悩んでたって仕方ねぇし)
自分一人で悩んだところで、何も答えなど出やしなかった。
アルツィの行動をどんなに思い返したとしても、その事実は消えないし、アルツィの想いが判るわけでもない。
最初のうちはよく分からない怒りに任せ、否定しまくっていたヴェルナーだったが、幼馴染のエルカに言われた一言に残りの4日はただ呆然と過ごしただけだった。
『そんなに否定してどうするの?』
ある意味、衝撃的な言葉だった。
それまで頭をいっぱいに占めていた意味のない怒りがふっと消え、代わりに浮かんだのは戸惑いだった。
(オレは事実を否定して、何がしたいんだ…)
結局のところ、何も答えが出ないまま、無駄に4日を過ごしてしまった。
FF11_Story_9(A×W)
その日は何がなんだからわからずに、頭をぐるぐるといろいろなことが回ってしまったまま終了。
2日目は冷静になろうとしたけれど、昨日のことを思い出してジタバタともがいて。
3日目にやっとそれでも人と話ができる程度には落ち着きを持って。
そうして出来ることと思いついたのは、他でもない、幼馴染にこの心中をぶつけることだった。
『いきなりそんなことするか?!ふつー!?』
個人通信で見えないはずの相手に、心の限り捲くし立ててヴェルナーは怒鳴ってきた。
耳元で聞こえるその怒声に、エルカは少なからず顔をしかめる。
「言葉で言っても通じないって思われたからだろ?」
ふぅ、と軽くため息をつきつつも、ストレートに返す。
いつもなら、ぐっ、と詰まる声が聞こえるところだが、今日のヴェルナーはそれしきで打たれる様子もなく、先ほどと同じ勢いで返答する。
『だからってなぁ!常識的にありえないだろうが!』
「君が常識を語れないのに言うんだ」
ヴェルナーの言葉に、へぇ、と呆れ半分で答えると、さすがに今度は効いたようで、詰まったような声が耳に聞こえる。
『オレだってそういう最低限のジョウシキぐらいは、ある!』
どちらかといえば、この場合常識ではなく、礼儀のような気もしないでもないが、エルカはそれ以上突っ込むのをやめた。
FF11_Story_8(A×W)
突然の事に、アルツィは目を見開いて、目の前の男を凝視した。
先ほどまで困惑の表情で固まっていたはずの彼は、今は険しい顔で自分の襟首を掴み上げ、睨んでいる。
まったくもって何が起きているのか理解できない。
そんな顔でアルツィは口を開くこともできずにただ彼を見つめるばかりだった。
アルツィの心境など気にもせず、怒りあらわのヴェルナーは思うがままに口を開いた。
「…イライラすんだよ!あんたの対応にさ!」
「………………」
「なんで、わけわからん行動してくるんだ?!理解できねぇんだよ!」
聞いているアルツィからしたら、ヴェルナーの言っていることこそ訳がわからない。
突然怒りだしたかと思えば、支離滅裂に。
いや、彼の中では問いただしたいことが明確になっているのかもしれないのだが、当然のことながら、アルツィにその思いが伝わっているわけがない。
アルツィは未だにわからない、という顔で、ヴェルナーを見つめる。
「なんでそんな呆けた顔してんだ!怒ってンのわかんねぇのかよ?!」
「……いや、君が怒っているのは十分に判る。判るけど……」
「けどなんだよ!」
「なんで怒ってるのか判らない」
素直にアルツィは疑問を口にする。
あくまで冷静に。
そんな態度がこれまたヴェルナーの癇に障ったらしく。
「なんでそんなに冷静に返すんだよ!」
FF11_Story_7(A×W)
「ああ、いた」
そう聞こえた声に振り返ると、いるはずがない人物が自分の視界に映った。
「見つかってよかった」
そう呟く彼は、ほっと一安心とでもいうように、顔を綻ばせた。
ヴェルナーはというと、あまりの想定外の出来事に目を見開いて目の前に立つ人物を凝視するばかりだった。
そんなヴェルナーの顔の前で手を振る彼-アルツィ-は、大丈夫?と首を傾げて問い掛ける。
「っっ!あ、あんた!なんでこんなとこにいんだよっ!」
アルツィの心配(?)を余所に、ヴェルナーは慌てた様子で後ずさり、自然と距離を取る。
予想だにしていなかった人物の登場に、ヴェルナーは驚きを隠すことができない。
アルツィはというと滅多にみれないヴェルナーの慌てぶりの様子に、苦笑を堪えきれない。
「何でって言われると、追いかけてきたから」
だからここにいるんだけど、と微妙な答えを返して、ヴェルナーの視線にあわせるようにその場にしゃがみこむ。
見上げる形だった視線は同等の位置に下ろされ、けれどそれに触れることなくヴェルナーはアルツィの答えに突っ込んで問い掛ける。
「追いかけてきたって…なんでじゃあ、追いかけてきてるんだよ!」
「ジュノから出て行く君を見かけたから」
「見かけたからってなんで追いかけてくるんだよっ!レベル上げとかそういうのだってあるだろうが!」
「まぁ、そうなんだけど。そうじゃないって思ったから」
「何わけわからんこと言ってんだ、アンタ」